シンプルよりも、あえて「複雑性」を取るという選択

目次

はじめに

「余白を大切に」「選択肢は絞るべき」──
ミニマルなスタイルや効率重視の考え方が、あらゆる場面で注目される今。教育の現場においても、「わかりやすさ」や「均一性」が良しとされがちです。
でも本当に、すべてを“シンプル”に整えることが、子どもたちの学びを支えるのでしょうか?

立命館大学OICキャンパスを見学する機会を得た私は、教育における「複雑性」と「多様性」が持つ可能性について深く考えさせられました。今回は、その気づきをもとに、学校現場や教室環境のあり方について考えてみます。

多様性が織りなす学びの場

OICキャンパスでは、まるでテーマパークのように多様な学びの空間が広がっていました。
静かな自習スペース、活発なディスカッションができるグループ席、映画館さながらのAV機器付きホール、そして3Dプリンターを備えた実験室──。
「自分に合った学び方を自分で選べる」ことが、当たり前のように実現されているのです。

これは教育の本質にも通じる話です。学びは、画一的なスタイルではなく、多様性の中からこそ豊かに育まれるもの。教室でも「こうあるべき」から離れて、それぞれの子どもが自分に合った方法で学べる場をデザインしていく視点が求められます。

あえて混ざり合うことの価値

同じ属性や考え方の人同士で集まれば、衝突は少なく、物事もスムーズに進むかもしれません。でもそれは「安心」ではあっても、必ずしも「成長」や「創造」につながるとは限りません。

教室でも同じことが言えます。話したい子もいれば、静かに考えたい子もいる。
理論派もいれば、感覚的に動く子もいる。こうした違いが混ざり合うことでこそ、子どもたちは自分と異なる視点に出会い、互いに影響を与え合うようになるのです。

異質なもの同士がぶつかるからこそ、新しい気づきや変化が生まれる。
あえて「混ざる」ことの価値を、改めて大切にしたいと感じました。

「教室」という前提を疑ってみる

黒板の前に全員が座る。授業は45分。教科ごとに時間割が分かれている。
これらは「当たり前」とされてきた学校の構造ですが、それが本当に今の子どもたちに合っているのか──一度立ち止まって考えてみることも必要です。

OICキャンパスのように、空間の使い方を柔軟にするだけでも、学びのあり方は大きく変わります。
「机と椅子がある部屋」ではなく、「子どもたちが問いを探求できる空間」として、教室を捉え直してみる。
こうした視点の変化が、教育の可能性を広げる起点になるのではないでしょうか。

おわりに:環境を「混ぜる力」が未来を開く

教育とは、無数の「違い」が交わる場です。
だからこそ、環境や仕組みも“違いが交わること”を前提に設計されているべきではないでしょうか。

もちろん、複雑性には「扱いにくさ」も伴います。ですが、それをあえて受け入れた先にこそ、創造性や主体性といった力が育つと私は感じています。

シンプルを目指すのではなく、「多様で複雑なものを扱える力」を子どもたちと育む。
それが、これからの教育のキーワードになっていくのかもしれません。

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