はじめに
教育のこれからを考える中で、海外の実践から学べることは数多くあります。
私自身、以前オランダを訪れた経験の中で、日本の教育との違いに多くの気づきを得ました。
今回はその中でも特に印象に残った「シティズンシップ教育」という視点から、
これからの教育の方向性について考えてみたいと思います。
日本とオランダの“社会の見え方”の違い
オランダという国は、九州ほどの国土ながら、経済的に非常に安定しており、個人の生活も豊かです。
宗教的背景としてカルバン派が根付き、「商業を肯定的に捉える文化」が経済の成長を支えてきました。
一方で、日本は歴史的に「お金を稼ぐこと」や「商人」をどこか否定的に見てきた背景があります。
この“文化の前提”の違いが、経済や教育の方向性にも大きく影響しているのではないかと感じました。
オランダで根づく「社会をつくる教育」
オランダでは、国を挙げてシティズンシップ教育(市民性教育)が進められています。
これは、単に「ルールを守る」だけでなく、「自分たちで社会をよりよくしていく存在として育つこと」を目的とした教育です。
・自分の意見を持ち、発信する力
・対話を通して価値観の違いを尊重する姿勢
・地域や国の課題に参画する意識
これらを育む学びが、学校現場で当たり前に行われているのです。
日本の教育が目指してきたもの
日本の教育基本法 第1条には、次のように定められています。
第一条(教育の目的)
教育は、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者として、
真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた
心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
とあります。
この条文の中にある「社会の形成者」という言葉。
その意味をどう捉えるかによって、教育のあり方は大きく変わってきます。
しかし、ここでいう「社会の形成者」とは、
- 納税をする
- 法を守る
- 周囲に迷惑をかけない
といった“守る側”としての在り方を想起させがちではないでしょうか?
オランダで出会った教育者たちは、「社会を自分たちでつくっていく」という発想を自然に持っていました。この差に、今の日本教育が抱える「見えない限界」を感じました。
教育が果たすべき“次の役割”とは
これからの教育に必要なのは、個人の力を育てるだけでなく、「その力で社会をどう変えていくか」まで見据える視点です。
- 子どもたちが社会課題に目を向け、対話や行動を通して関われるように
- 学校が「ルールを教える場」から「社会づくりを学ぶ場」へ
- 教師もまた、社会の形成者としての生き方を実践する存在へ
そんな教育の姿を、私たち自身が問い直していくことが大切なのではないでしょうか。
「社会の形成者」という言葉の中に、自らが社会をつくる一員であるという自覚が込められているか。
日本でも、そんな教育のあり方を本気で考えるタイミングが来ているように感じます。
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