はじめに
「子どもたち自身が、自然と話し合いを始める」
そんな場面に立ち会ったことはありますか?
今回のテーマは、「子どもたちが自ら動き出すような対話」がどのように生まれるか。
偶然のようでいて、実はそこに“土壌”があったことに気づかされる、そんな実体験をもとにお話しします。
ベイスターズの「自主ミーティング」からの学び
きっかけは、あるYouTube番組で紹介されていたエピソード。
横浜ベイスターズが日本一に輝いた年、日本シリーズ直前に一部の選手たちが、自主的にミーティングを行ったそうです。
監督やコーチが知らないところで、自らチームの士気を高めようとしたその姿勢。
この話を聞いたとき、私はすぐに教育現場と重ねて考えていました。
教師が主導して「話し合おう」と促すのではなく、
子どもたち自身が「話す必要がある」と感じて、自然と輪が生まれる。
そんな瞬間が、本当の意味での“自主的な対話”なのだと思います。
唯一の経験─卒業式前の奇跡
私の教員人生の中で、まさにこのような対話が自然発生したのは、たった一度だけ。
卒業式の練習がなかなかうまくいかず、私自身も手立てを見失っていた時期でした。
その日、教室に行ってみると──
子どもたちが、自分たちで教室を使って練習を始めていたのです。
何をどう伝えようか悩んでいた私たち教師よりも先に、
子どもたちは動き出していた。
あのときの感動は、今でも忘れられません。
自主的な対話が生まれる“土壌”
この経験から学んだのは、こうした対話は「狙ってつくれるもの」ではない、ということ。
ただし、起こるための“土壌”はあります。
・話し合いが意味のあるものだと感じていること
・方法を知っていて、自信を持っていること
・「このことは自分たちで決めたい」という強い思いがあること
そして、何より「自分たちで良くしていきたい」という願い。
これらが重なったとき、子どもたちは自然と声をかけ合い、対話を始めます。
おわりに
教師が関与せずとも、子どもたちの中で“動き”が生まれる瞬間。
それは決して日常的に起こるものではないかもしれません。
でも、その可能性があることを知っているだけで、
私たちの関わり方は変わっていくはずです。
「今、話し合うことが必要だ」と子どもたち自身が感じられるような環境づくり。
そこに、私たち教師の役割があるのではないでしょうか。
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